塾生まつせです。

私は現在、長い治療が必要な子供と家族の生活環境を支援する施設で働いています。直接、子供に関わる事は少ないですが、今回、乳児の身体に触れる機会があり、整体師視点から深い気づきがありました。

 乳児は身体の成長速度がめちゃくちゃ早い

その乳児Sくんとは、生後7か月頃から11か月までの化学療法治療のない、比較的元気な期間に関わる事ができた。出会った頃は、ようやくお座りができ始めた頃で、神妙な面持ちで母にくっついていたS君。座らされるとその場からあまり動く事はなかった。

初回治療を終え、910か月頃に会うと、掴まり立ちと匍匐前進、時折ハイハイができるようになり、行動範囲が拡大。表情も豊かになり、目が合うとニヤリ。悶絶かわいいナース殺しになっていた。足投げ出しのお座りから手を出してハイハイに移行。ハイハイから正座へとスムーズに姿勢が変化できるようになり、姿勢のバリエーションが増えていた。

さらに2回目治療後の1011か月で会うと、掴まり立ちの安定性とバランス感覚が増し、ハイハイがスピードアップしていた。11か月児の正座は小さな下肢がきちんと折りたたまれ、ちんまりと内向きのつま先が超絶かわいい。正座姿は武士のよう。これまで、いつの間にか変化している成人、高齢者を見る事が多かったが、乳児の成長の早さに驚かされた。

 興味をそそられたS君の動き3選

私が注目した行動、動きが3つある。

その1:早い匍匐前進

余裕がある時はハイハイ移動。しかし興味のあるモノ、母を発見するととたんに肩と股関節が連動した匍匐前進に変わる。瞬時の判断で鍛えた筋肉を優先⁉上肢と肩を回しスピードアップして目的地へ向かう。

その2:上肢でのバランスとり

乳幼児は股関節内旋かつ膝関節が十分に伸展せずO脚。明らかに上半身が長く頭も大きい。掴まり立ち時、不安定な下肢で全身が大きく揺れるが、実にうまく上肢でバランスを取る。

その3:美しい正座

ハイハイからスッと上体を起こし正座になる。座骨で座るとはこういう事か、の見本のような歪みのない姿勢。(超絶かわいい)

授業で先生が「子どもは7歳ぐらいまで身体の使い方が完璧。座骨で座る。」と言われていたが、実際に見てその美しい姿勢に感心した。

 素の筋肉の柔軟性

乳児は丸く縮こまる胎児姿勢からスタートし、生まれると上肢下肢の屈筋群は筋肉本来の長さのままで肩関節を水平伸展・外転・外旋、股関節を屈曲・外転・外旋、肘関節と膝関節を屈曲させている。

 S君と出会った7か月頃は自我が出てくる頃。食べる行動に繋がる上肢の筋肉は下肢より先に鍛えられる。背臥位で哺乳瓶を持ち、奪われそうになると抵抗する。そうした時、等張性収縮で短縮している上肢の筋(三角筋、上腕二頭筋、大胸筋、前鋸筋等)や、手指の屈筋群には伸長性収縮が起こり、鍛えられる。

910か月頃の匍匐前進と掴まり立ちは上肢の筋力トレの賜物といえる。行きたい所への移動が叶うようになると、日々の筋トレは加速する。匍匐前進、いわゆる摺り這いは、主に上肢及び肩甲帯のスムーズな働きで体幹と下肢をひとまとめに移動させる。

ハイハイは上肢に続いて乳児が「足⁉これ便利!」とその存在と活用できる事に気づき、獲得する動き。股関節と膝関節を深く屈曲した移動で全身運動に繋がる。

 生活の中で鍛えられる筋肉

子どもは身体そのものがバネのように伸び縮む。筋肉はフワフワで柔らかく、筋肉痛もない様子。睡眠をとる事で回復しているようだ。

以前の授業で、先生から「立つことに筋肉は必要ない。重心のバランスを取ると、骨で立てる。」と教わった。筋肉のない高齢者の例で納得したが、S君の動きから乳児も然りだと思う。つまり人が身体を使っていく上で第一に獲得する事は重心、丹田のコントロールである。成長と共に大きく長くなる身体、四肢を扱い、丹田をコントロールするには、柔軟な筋肉と自在に動かせる関節である事が大切だ。そこに激しい筋トレは必要なく、日常生活上の動きを丁寧に行う事で筋肉は鍛えられ、丹田は整えられる。


良くできました