塾生の小野寺道枝です。

整体院などで「右脚短い」などと言われたことで、他の不調もすべてそれと結び付け、「右脚が短い」のだから仕方ないと思い込んでしまう。


それはまるで「呪い」をかけられてしまったよう。


それでは、治るものも治らなくなってしまう…


そんな呪いをかけられてしまった人へ
「本当の短下肢(脚長差)とは?」
「よくある短下肢の要因と解消法」

をお伝えしたい。


本当の短下肢(脚長差)とはなにか

脚の長さに左右差があるとは、どういう事だろう?


整体院などで指摘される左右差の根拠は、大抵、仰臥位または伏臥位で足を引っ張り、踵の位置を比べて「右脚が短いですね」といった具合で、骨の長さを測定するわけではない。


脚長差があるというのなら、せめて以下を測り左右で比べたい。

  • 踵骨+距骨の高さ
  • 脛骨の長さ
  • 大腿骨の長さ

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    測りもせずに「右脚が短い」と言われたところで、脚の骨は<図1>のように、1本ではないのだから、どこを指しているのかわからない。


    脚長差を指摘するのであれば、きちんと骨の長さを測るべきである。


    ■よくある「なんちゃって短下肢」

    実は、実際に脛骨や大腿骨の長さが見た目でわかるほど左右で違うなんてことは滅多にない。

    あったとしてもせいぜい数ミリ。


    では何故、左右の踵の位置が揃わないのか?

    ほとんどの場合、骨盤の傾きに左右差があり、結果股関節の位置に違いが出ているだけ。


    つまり、脚の長さ自体は同じでスタート地点がちょっと違う「なんちゃって短下肢」ってこと


    なんちゃって短下肢の要因

    骨盤の傾き具合に左右差があるということは、すなわち骨盤が歪んでいるのでは?と考える人も多いだろう。しかし、骨盤自体は骨なので動かず、歪みようがない。動くのはあくまでも関節。


    なので、骨盤に接する関節である腰椎と股関節に骨盤を傾かせる要因があるのだと考えられる。


    「腰椎・股関節が骨盤を傾かせる」
    とは、どういうことか?

    姿勢は「動き方の癖」の影響を受けてしまう。

    「動き方の癖」とは、日々の生活の動作に加え、趣味や仕事で長時間、繰り返し行う姿勢や動作。それにより、よく使う筋肉と使われない筋肉に差ができて、筋肉の長短のバランスが崩れ、本来の骨配列を崩してしまう。つまりこの場合は、腰椎や股関節周りの筋肉の使われ方のアンバランスによって、骨盤の傾きが作られてしまうということになる。


    更に言えば、骨盤が傾くと重心が偏ることになる。

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    私達は様々な場面で重心を傾けて動作しているが、特定の姿勢を長く続けたり、同じ動作を繰り返すと、偏った重心を戻せなくなる。
    結果、骨盤は傾いたシーソーのようになって、どちらかの脚は引き上げられ反対側は押し出されるということ。


    体験談

    私も呪いをかけられたうちの一人なので、自らの体験を例として挙げてみよう。

    ある理学療法士の姿勢診断を受けた際に、例に挙げたように「右脚が短い」とされ、6㎜のインソールを薦められた。6㎜の根拠は、まずは右脚に3㎜くらいのインソールを着用し、歩く姿を後方から撮影し、左右の骨盤の振れ幅が均等になるまで厚みを上げていき、6㎜を着用したところでほぼ均等になったから。

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    ということで、私は
    6㎜のインソールを購入したものの、内心は穏やかではなかった。


    そもそも、当時私は、介護の現場で不良姿勢による関節疾患や機能低下を抱える方をたくさん見ていたので、そうならないよう今のうちにできることをアドバイスして欲しくて訪れた姿勢診断だった。

    ところが、予防どころか「あなたは右脚が短く、もう治らないから一生補助具を」と…
    私は「すでに手遅れだったのか」とショックを受けたと同時に「私は右脚が短い」という呪いをかけられたのだ。


    さて私自身、骨の長さを測ったわけではなく「右脚が短い」と言われてしまったわけだが、
    先に書いたように右脚が短く見えるのが、実は骨盤の傾きによるものならば、腰椎・股関節の使い方に問題があるということになる。


    思い当たるのは、中学3年間の部活動だったソフトボール。
    更に、40代でママさんソフトボールチームに所属し、1200回の素振りを日課としていた時期があった。右バッターであるが故、腰椎は左にねじれ、股関節は右が外旋、左が内旋を繰り返していたことになる。

    簡単セルフケア

    では、腰椎・股関節の「癖」を解消するセルフケアを考えてみよう。

    私の例でいえば、右でバットを振っていたなら、単純に左で振れば、腰椎・股関節の動きは全て逆になるので、これも1つの改善策になる。

    しかし、これといって思い当たることがなければ、腰椎・股関節の動作の左右差を減らすストレッチや、軽い運動がいいだろう。

    腰椎ができる動作は、屈曲・伸展・側屈・回旋

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    運動の例としては、四つ這いになり屈曲・伸展を交互に繰り返す。
    そして屈曲がうまくいかないのであれば、腰周りの筋肉が伸びないことが原因と考え、腰椎伸展の筋肉である脊柱起立筋のストレッチを、逆に伸展がうまくいかないのであれば、腰椎屈曲の筋肉である腹直筋のストレッチをする。

    側屈、回旋に関しては、左右行ってみて、やりにくい方を多めに行うとよい。
    ただし、やりやすさの自分の感覚は案外当てにならないので、側屈であればどちらにたくさん倒れているか、回旋であるならどちらがたくさん振り向けているかなど、人に確認してもらうのがよいだろう。

    また、側屈・回旋そのものが苦手な場合は、主な側屈の筋肉である腰方形筋や主な回旋の筋肉である内腹斜筋・外腹斜筋をほぐしたりストレッチするといいだろう。

    股関節ができる動作は、屈曲・伸展・内転・外転・内旋・外旋
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    最も簡単な運動は、ベッドの上で、もしくは床に座ってテレビを見ながら膝を立て、膝を左右に倒す。
    すると、内転・外転・内旋・外旋の筋肉を同時に動かすことができる。

    また、この動き自体がやりにくく、股関節周囲が硬いと感じるなら、股関節周囲の筋肉を1つ1つ丁寧にストレッチしてみよう。

    屈曲がうまくできないのは、伸展の筋肉が縮んでいるからなので、伸展の筋肉である殿筋群・ハムストリングをほぐしたり伸ばしたりするとよいだろう。反対に伸展が苦手なら、屈曲の筋肉である腸腰筋・大腿筋膜張筋・縫工筋をほぐしたり伸ばしたりするなど、ある動きができない場合その動きを邪魔する筋肉が必ずあるので、それを見つけて、ほぐしたりストレッチすることが、ケアとなる。

    また、立位であっても座位であっても骨盤が前後に倒れることなく起きている状態(俗にいう骨盤が立っている状態)は、腰椎・股関節に偏りがない状態なので、普段から立ち方・座り方に気を付けることも大事。

    根本解消のための対策測必須
    「短下肢」に限らず、「左肩が上がっている」「腰が反っている・丸まっている」のように、人から指摘を受け、私のようにショックを受けた人は多いだろう。


    「動きの癖」は人生長ければ長いほど積み上がっていくもの。

    ましてや「利き手」があるので、必ず左右差は生じる。きれいに左右対称の人なんていない。

    そしてそれは悪いことばかりではなく、身体を動かす上で、その方が都合が良い場合もある。

    しかし、環境や癖があまりに偏っていると、いつしか痛みなどの症状で知らされることにもなりかねない。

    対策は、癖を作っている「いつもと同じこと」に気づき、それをちょっと変えてみること。

    例えば…

    • いつも同じところに座って決まった方向からテレビを見ている
    • いつも同じ脚から歩きだす
    • いつも同じ立ち方をしている
    • ゴルフ・野球・テニス など 決まった動作を繰り返す


    上記のような同じ動作の積み重ね、すなわち習慣によって右脚が短くなったのなら、習慣次第で長くもなるはず!


    「今日はいつもと反対にしてみよう!」そんな遊び心で、姿勢と動作の偏りを減らしてみてはいかがだろう。

    まとめ(さ計

     「右短下肢」などと言われてしまうと、もうそれは致し方無いと思いがちだが、骨が変形したわけではない限り、それは筋肉の問題。

    「動きの癖」によって筋肉に長短できて、それが骨配列を崩しているなら、「動きの癖」を改善したり、ちょっとしたセルフケアを行うことで解決できる。

    今回は脚の長さの左右差についてだったが、他の歪みや凝り、痛みの改善も筋肉由来であるなら対策は同じ。

    つまり、普段から偏った身体の使い方に気を付けることだ。


    良くできました